NOT A HOTEL Web3サービスの裏側|イベントレポート              

これまでNOT A HOTELが取り組んできたWeb3サービス開発における課題をどうやって解決してきたのかを解説するオンラインセッションを開催しました。

「NOT A HOTEL Web3サービスの裏側」と題して企画した本イベントは、平日の日中帯にも関わらず、大変ありがたいことに100名を超える方々にお申し込みいただきました。

事前に参加者の皆様からの質問をいただき、NOT A HOTELがこれまでに進めてきたWeb3事業の中での気づきや経験を元にお話しさせていただきました。「こうした方がよい、このようにあるべきだ」のような特定論や参加者の事業に関するアドバイスや助言ではなく、あくまで『NOT A HOTELはどのような課題に直面し、どう向き合ってきたか』という当社の事例紹介を行いました。

※オンラインセッションの一部を抜粋して記事化しておりますので予めご了承ください。

登壇者紹介

Web3サービスの裏側Q&A

事前にいただいた質問に対して、各担当者が実際にどのように対応をしたのか、課題解決に向けて取り組んできたのか、取り組んでいるのかを、詳しくかつ率直に解説していきました。

渡辺
弊社のサービスには、NFTとFTの両方が含まれています。NFTは「メンバーシップ」という商品であり、FTは現在展開しているNOT A HOTEL DAO(以下、NAHD)の「NOT A HOTEL COIN(以下、NAC)」です。NACは「ナック」と呼んでいます。

いずれも有価証券には該当しないと整理しています。これは、プロジェクトの初期段階で外部の法律事務所に依頼し、「有価証券に該当しない」との意見書を取得した上で、金融庁に提出し、その了承を得てから審査を進めた経緯があります。そのため、早い段階で適切な法的整理を行っています。

有価証券性の判断には明確な基準があるわけではありません。そのため、商品設計の段階で有価証券に該当しないよう慎重に構築することが重要です。有価証券と判断された場合、トークンは規制上、有価証券として扱われ、証券会社への委託や厳しいルールが適用されるため、その点も考慮しながら進めています。

NACは「暗号資産」として分類し、NFT(メンバーシップ)は「前払式支払手段」として整理しています。前払式支払手段は、回数券のような位置づけであり、一方でNACはユーティリティトークンとして機能します。

当社では、セキュリティトークン(ST)を採用する必要はないと判断しました。すでに不動産や信託受益権といった形で販売されている商品があり、それらと市場の間を埋める形で「利用権」として機能するトークン設計を採用しています。そのため、セキュリティトークン化せずに運用する方向で進めています。

岡本
NFTを扱っている事業者は、既存の企業の中ではまだ少ないと思います。さらに、NFTとFTの両方を展開している企業はほとんどないですよね。この2つを組み合わせて運用することで、何か特に難しくなった点や、整理がより必要になった部分はありましたか?

渡辺
基本的にNFTとNAHDが発行するFTは別のものです。NOT A HOTELはさまざまな販売方法を採用していますが、基本的な構造として「所有」と「運営」が分離されています。そのため、所有者が必ずしもすべての宿泊日を利用するわけではありません。

具体的には、まずホテルのオーナーが存在し、基本的には自身で利用しますが、使用しない日程もあります。その未利用分を「ホテルの宿泊権」として販売し、その宿泊権をNFT化して取引できるようにしたのがNFTの仕組みです。これが、ホテルの運営段階での販売方法の一つとなっています。

一方、 NAHDはホテルの所有者の一人です。NAHDというNOT A HOTELの子会社が所有者の役割を担い、その背後にFTであるNACのホルダーがいるという構造になっています。したがって、NFTとNAHDはそれぞれ異なる役割を持っています。

NFTは「宿泊権の販売」、NAHDは「ホテルの所有者」として機能するため、両者は競合するものではなく、むしろ両立可能な関係にあります。

和形
Web3事業を継続・拡大する上で、税務が大きなボトルネックや課題になっているわけではありません。ただ、事業を推進する中で、新しい施策やサービスを検討していく際に、これまでにない新しい取引や要素が多く含まれている点は確かです。

そのため、税務上の取り扱いが必ずしも明確でないケースもあります。特に、NFTと暗号資産それぞれに関して、実施している施策の取引内容を整理し、税務上の論点を明確にする作業が必要となります。これは大きな課題というわけではありませんが、新しいサービスが登場するたびに整理を進める必要があると考えています。

また、税務上の取り扱いについては適宜アップデートが行われており、ビジネスに大きな影響を与える可能性があるため、情報収集や事業への影響分析を継続的に行いながら対応を進めています。

岡本
実際の業務の中で、「これがいつも厄介だ」と感じるようなことはありますか?例えば、イーサリアムが入金された際に、すぐに計算しなければならないといった点などが挙げられるかと思います。私は業務のオペレーションとしてその流れは理解していますが、経理や税務の担当者にとって、どの程度工数が増えているのかについて詳しく知りたいです。

和形
特に計算に関しては、その都度行い、経理や税務の処理に反映させていく形になります。ただ、今お話しいただいた点については、プロセスを構築する段階で 「そもそもどのようなデータが必要か」 という前提の整理が重要になります。

理論的には必要な処理が整理できたとしても、実際にそのデータを取得できるのかどうかという点が課題になります。そのため、内部での検討や連携を進めながら、課題を解決しつつ、最終的に税務計算に落とし込んでいくプロセスを整備しているところです。

このあたりが、業務の中でも特に複雑な部分だと感じています。

伊達
私たちは、開発を進める上でプロジェクトの持続可能性や拡張性を重視しています。
そのため、今回ご質問のあったチェーン移行やコントラクトのバージョンアップについても、柔軟に対応できる仕組みを導入しています。

チェーン移行については利用者の利便性とシステムの安定性を最優先に検討し、適切なチェーンを選定しています。現在はイーサリアムのチェーンを使用していますが、今後、より性能が高く、コミュニティの成長が期待できるチェーンが登場した場合には、移行を検討する方針です。

コントラクトのバージョンアップについて、既存のコントラクトはアップグレード可能な設計を採用しており、必要に応じて機能の追加やバグ修正を柔軟に実施できる仕組みを導入しています。これにより、プロトコルの進化を妨げることなく、利用者に一貫した体験を提供することを目指しています。

岡本
よく質問をいただく部分なのですが、NOT A HOTELはなぜチェーン選定をイーサリアムにしたのか、その理由を教えて下さい。

伊達
イーサリアムは最もポピュラーなチェーンであり、ユーザー認知の観点において、また開発のしやすさという点で他チェーンよりも長期間開発が進められてきたため、充実した開発環境やエコシステムが整っています。この点は非常に大きな利点であり、サポートや開発において大いに役立っています。

一方で、最近のイーサリアムのガス代高騰により、コストが高くなるという課題もあります。そのため、こうした課題と開発の利便性とのバランスを考慮しながら、今後の方針を決めていきたいと考えています。

渡邉
2022年にNOT A HOTELがNFTを発行した際は、海外の「Flyfish Club」というサービスが、「レストランの会員権」をNFT化し、「NFTを保有している人のみが入店できる」という構想を発表していました。私たちも、こうした事例を参考にしながら着想を得ました。

今回のNAC(ナック)の仕組みを考え始めた時、私たちのようにリアルワールドアセット(RWA)、特に不動産の宿泊権をユーティリティとしたトークンを発行する試みは、世界的にもまだ例がほとんどなかったかと思います。このため、特定のプロジェクトをベンチマークにするというよりは、海外を含むIEOの事例、不動産REIT(リート)などのWeb2の仕組みなども参考にしながら、「すべての人にNOT A HOTELを」という会社のミッションを実現するため、試行錯誤を重ねてきました。サービスローンチ自体も大変でしたし、まだまだ改善余地や実現したいことが山積みで大変なこともありますが、世界でも例を見ない唯一無二のサービスを創っている感覚があり、個人的にはとてもワクワクしながら事業開発を行っています。

リサーチは、突飛なことを行っておらず、インターネット検索中心、最近はChatGPTなどのAIも使います。また、Web3の分野では鮮度の高い情報をXで得つつ、公式情報などで裏取りをすることも多いです。また、Web3メディアの方々がグローバルの先進的な情報を把握されていることも多いので、情報交換をさせていただいています。

福岡
IEO前のヒアリングで、暗号資産の存在自体は知っているが、暗号資産を購入したことがないまたは購入方法が分からないという方がまだまだ多いことがわかっていました。

また、ご質問の通りNOT A HOTELが直接的な営業活動ができないというジレンマもありましたので、そのため以下の3つのポイントを意識して取り組みました。

1つ目は、NOT A HOTEL COINを購入する理由を明確に伝えることです。これまでに購入経験のない暗号資産を購入する意味をしっかりと説明し、納得してもらうことが重要だと考えました。そのために、まず「NOT A HOTEL」というプロダクト自体の魅力・価値を十分伝えることに注力をしました。

2つ目は発行元への信頼を確立することです。暗号資産を発行する媒体・運営側が信頼できるかという観点も非常に注力しました。NOT A HOTEL DAOプロジェクトのあり方として、公平でありかつ透明性の高いサービス設計になっています。サービス設計の部分と合わせてリアルイベントを通じて運営側が顔をだして丁寧に説明を行なっていくことで、一定以上の信頼を得ることができると考えていました。

3つ目はリアルな体験を提供することです。NOT A HOTELのプロダクトが「リアルワールドアセット(RWA)」として実体を伴うものであるため、実際に体験できる機会を提供することが重要だと考えました。そのため、開業しているすべての拠点の現地見学会を開催し、プロダクトである物件を体験してもらう機会を積極的に作りました。

岡本
具体的なターゲットの設定と施策はどのように立案されましたか?

福岡
NOT A HOTEL DAOとNOT A HOTELの既存事業では、ターゲット層とする顧客層が大きく異なると認識しておりました。NOT A HOTEL(物件)購入者は経営者が多いのですが、Web3事業で提供するサービスのターゲットは、会社員などの層に広がると考えていました。そのため「NOT A HOTELは知っているけど手が届かないサービス」という認識がある前提のもとに発信内容などのコミュニケーションを意識しました。また、立案した施策を2022年に販売したNFTをご購入いただいたお客様へヒアリングをして具体化させていきました。

大久保
一概に言い切れない複合的な理由がありますが、特に重視しているのは「ワクワクする世界を作れるか?」ということと、「すべての人にNOT A HOTELを」というミッションの実現方法を考えることです。「家は一つ持つもの」という固定観念を超えて、より自由で柔軟なライフスタイルを実現することが私たちの目標です。そのための手段として、Web3とDAOの仕組みを取り入れるのが合理的だと考えました。

従来の住宅市場では、「家を買うか借りるか」「ホテルは泊まるもの」という選択肢しかありませんでした。しかし、NOT A HOTELでは、「使う分だけ所有し、使わないときはホテルとして貸し出し、相互に利用する」という新たな仕組みを生み出しました。この仕組みをさらに進化させるため、Web3技術を活用し「みんなで共有し、みんなで利用し、みんなでNOT A HOTELを作る」という発想に至りました。また、ブロックチェーンを活用することで、利用権の透明性を高め、ユーザー同士の自由な取引を促進できるというメリットも重要なポイントです。

さらに、暗号資産NACを発行することで資産価値を付与し、より多くの人がNOT A HOTELに参加しやすくする仕組みを整えました。実際にIEOで調達した資金をもとに、NOT A HOTEL DAO株式会社が物件の購入・開発を行い、ユーザーはNACを保有または預けることで宿泊権を得られる仕組みを実現しています。

NOT A HOTELのWeb3サービスは、私たちが掲げる「すべての人にNOT A HOTELを」というミッションを実現するための、新しい形のサービスです。

岡本
NOT A HOTELがWeb3領域に踏み込んだのは2022年でしたが、創業の頃から代表濵渦さんとブロックチェーンで何かやろう、など話されていたのですか?

大久保
はい。NOT A HOTELは、サービス構想時から「別荘やホテルの稼働していない空室」な対する問題意識を持っており、その中でフィンテックの活用や独自トークンの発行などについて、議論を重ねていました。より多くの方々にNOT A HOTELを届ける仕組みを作るという意味でも、この取り組みには大きな可能性を感じています。

Web3への取り組みを開始した2022年当時は、仮想通貨業界にとって厳しい時期でしたが、同時に「3年後に動き始めては遅すぎる」という強い危機感がありました。今振り返っても、あのタイミングでNFT事業を始めたことは正しい判断だったと思います。現在取り組んでいるWeb3事業もまだ始まったばかりで課題もありますが、とても大きな可能性があり、よりワクワクする未来を描けると確信しています。一つひとつ着実に成果を積み重ねていきたいと考えています。


NOT A HOTEL DAO株式会社では、今後もWeb3サービスのさらなる充実、改善に取り組んでいきます。「DAO」という新しいコミュニティの中で、NOT A HOTELを創るプロセスを楽しみ、関わっていただきながら、「人生がより豊かになる、よりワクワクする」体験を届けていきます。

また、今後も定期的に「物件見学会」や、「インテリア・建築・食」などのテーマで、NOT A HOTELに興味を持っていただいた方との具体的な接点となるイベントを開催していく予定です。

「NOT A HOTEL/NOT A HOTEL DAOのこれが知りたい」というご要望がございましたら、以下のフォームからお気軽にお問い合わせください。

https://contact.notahotel.com/form-inquiry

登壇者紹介

渡辺徹志 @tetsushi1123
慶應義塾大学院法務研究科修了。株式会社国際協力銀行、渥美坂井法律事務所(パートナー)等で金融法務を中心に従事。2023年3月NOT A HOTEL参画。グループのLegal兼NOT A HOTEL 2ndのChief Compliance Officerを担う。弁護士(日本、NY州)

和形佳寿
新卒で日系証券会社に入社、リテール営業に従事。その後PwC Japan有限責任監査法人にて、金融機関やFintech企業に対する会計監査や決算支援等の会計アドバイザリー業務を経験。また、JVCEAの立ち上げにも参画し、会計関連の規則・ガイドラインを策定した。2024年9月よりNOT A HOTELへ参画。公認会計士。

伊達明伸 @a___date
早稲田大学在学中から、複数の企業でソフトウェア開発に従事。その後、メルカリ、Chompyで新規事業のソフトウェア開発を担当。2022年8月NOT A HOTEL参画。主にWeb3領域の開発を担当している。

渡邉亮 @RyoWatanabeDAO
東京大学法学部および英国ウォーリック大学大学院(MBA)修了。日本銀行にて調査分析、企画立案業務に従事したのち、アクセンチュアにて戦略コンサルティング、M&Aのビジネスデューデリジェンス業務を経験。大手通信会社におけるweb3新規事業推進を経て、2025年1月よりNOT A HOTELへ参画。

福岡航 @watarufukuoka15
新卒で株式会社Loco Partnersに入社、ホテル・チェーン本部に対して、流通拡大に向けた販売戦略立案・PR企画・新規包括契約などを担当。2021年10月〜2023年3月までマーケティング部にてWebマーケティング担当。2023年4月よりNOT A HOTEL株式会社参画、マーケティンググループに所属。

大久保貴之 @okbtks
九州工業大学大学院博士課程修了、博士研究員を経て株式会社カラクルを創業。2017年に株式会社ZOZOへM&A、ZOZOテクノロジーズ執行役員に就任。2021年10月NOT A HOTELに参画。

司会・進行役
岡本伊津美 @izmokmt
専修大学文学部卒。bitFlyerでカスタマーサポート業務に従事した後、サクラエクスチェンジビットコインの取締役COOに就任。2022年8月よりNOT A HOTELに参画。